逸人は、目の前で、土下座なんだか、猫のごめん寝《ね》なんだかわからないポーズをとっている芽以を見、ドアを閉めかねていた。

 ちなみに、猫のごめん寝とは、手の手の間に猫が顔を埋《うず》めて寝ているポーズのことで、今、可愛いと評判になっているようだった。

 この間、テレビで見たそれに、今の芽以は似ていて可愛いが。

 あれは、なにか困っていることがあると飼い主に訴えているポーズだと聞いた気がする。

 俺になんの不満があるんだ、芽以っ。

 いや、俺は芽以の飼い主ではないが。

 そういえば、今、日向子になりたいとか抜かしたか?

 あんな凶悪な女王様になりたいと言う意味かっ?

 いや、日向子と入れ替わって、圭太と結婚したいという意味かっ?
とぐるぐる考えていると、顔を上げた芽以が、いつまでも、なにも言わずに立っている自分を見て、不思議そうな顔をした。

「あ、ああ、すまん。
 おやすみ」
と言いながら、ドアを閉めたが、なんとなく、もやもやした気持ちが残った。