さすがの逸人も泣いてソファの後ろに隠れたりして、それを見て、親たちは薄情にも笑っていた。

 まあ、二、三歳だったからな、とソファどころか、家を出て、離れまで逃げた圭太は思う。

 あれから、自分もなまはげがトラウマだが、逸人もトラウマなようだった。

 しかし、しんみり芽以との思い出に浸ろうと思いながら、聞き耳を立てたのに、
「なまはげ」
 はないだろうよ、芽以――。

 とは思ったが、どんなときもシリアスになり切れない芽以と居るときの空気を思い出し、久しぶりに少し笑った。

 そのまま、行こうとしたが、先程まで、しゃがんでいたポリバケツの陰が目に入る。

 今まで、堂々と、ど真ん中を歩いてくるような人生だったが、何故か、最近、こういう隅っこが落ち着く。

 その、自分に安らぎを与えてくれたポリバケツを眺めながら、先程、逸人が言った言葉を思い出していた。