逸人は、テンション低い圭太が鬱陶しくもあったが、ひとつ溜息をつき、
「日向子が、妊娠したとお前を脅すつもりはなかったと言っているぞ」
と教えてやると、圭太は黙る。

 こいつ、日向子にはなにもしてないのに、責任を取ろうとしたのかと思い、イライラした。

 圭太のその優しさにだ。

 お前のそういう優しいところに、芽以は惹かれていたんじゃないのか。

 今から極悪人になるつもりはないか? と圭太を見つめてみたが、伝わるはずもなく、圭太はそのまま、黙っている。

 っていうか、同じような顔で落ち込まれると、自分も落ち込んでる気がするから、やめてくれ、と思いながら、つい、言わなくてもいいことを言ってしまった。

「誰にでも優しい男は、誰にも優しくないのと同じだ。
 そんなことで芽以を泣かすな」

 芽以が泣く姿は見たくない。

 初めて此処に来たときの、芽以の何処かぼんやりとした様子を思い出していた。