「お、おはようございます」
と挨拶したが、逸人は、一瞬、止まったあとで、

「……おはよう」
となにやら考えながら言ってくる。

 もしや、昨日、私を緊張させないようにする、と言ったことを気にしているのだろうか?

 いや、なにをしても無駄ですよ、と芽以は思っていた。

 朝っぱらからそんなに格好いいのに。

 この人を格好よくなくするというのは、神様にだって不可能ではあるまいか、と千佳が聞いていたら、後ろから猛ダッシュでやってきて、蹴りを食らわしてきそうなことを思う。

 例えば、この、既にすっきりと身支度を整えている逸人さんを、寝ぼけ眼まなこにしてみて。

 髪を寝起き風に、くしゃくしゃにしてみて。

 服をパジャマにしてみて。

 上から、だらしなくボタンを幾つか外してみたら。

 ……ちょっとセクシーになっただけだな。

 っていうか、普段、見ない姿だから、かえって、どきどきするんだが。

 うーむ、とおのれの妄想にとりつかれながら、一緒に食事の支度をし、テレビの部屋で、ご飯を食べた。