「それか、お前を先にしたのは、お前に止めて欲しかったのかもしれないぞ」

「……いや、でも、彼女に子どもができたみたいなこと言ってましたよ」
と言うと、

 そりゃ、もう、どうしようもないな、とらしくもなく入れてくれようとしたらしいフォローを逸人はそこで投げてしまった。

 もともとあった店を買い取ったものなのか。

 自分で買いそろえたものなのか。

 店内のものは、もうすべて整っていた。

 厨房から白と緑で統一された店内をぼんやり眺めながら芽以は言った。

「そもそも、私は圭太を好きだったのでしょうかね?」
と言って、そこからか……と言われてしまう。

 いや、だって、本当によくわからない、と思っていると、

「まあ、お前は、ぼーっとしてるからな」
と言って、逸人は俯き、ちょっと笑う。

 あ、笑った……。

 なんか久しぶりに見たなー。

 いつも、無表情に近いからな、と思って、ぼんやりその顔を眺めていると、睨まれた。