「あの、もう圭太も……圭太さんたちも帰ってくるみたいなので、そろそろ」

「あら、そうなの?
 日向子さんも一緒?」

 みたいです、と言うと、富美は、一気に酔いが冷めたような顔をした。

「じゃ、じゃあ、お邪魔にならないよう、失礼致します」
と挨拶した芽以は、また来なさい、と言われながら、そそくさと屋敷を出る。

 寒い夜道だったが、酔っているので、あまり苦ではなかった。

 月が綺麗だなあ。

 スーパームーンってやつだろうか、とビルの上に浮かぶ、やたらデカイ月を見ながら、芽以は言った。

「あのー、こんなこと言ってはいけないかもしれないんですけど」

 なんだ? という顔で、横を歩く、逸人が見下ろす。

「逸人さんが長男じゃなくてよかったです」

 日向子が来ると聞いたときの相馬家の妙な緊迫感を思い出しながら、芽以は、そう呟いた。