大人は、大事な会食の席で、ゲーできないもんな。

 子どもたちに呑み込めと言いながら、自分たちは表情にも出さずに頑張ったのか。

 大人って大変だな、と改めて芽以は思う。

 しかし、私もそのうち、親になったりするのだろうか。

 なんだか今は想像もつかないんだが、と思いながら、つい、側に居る逸人を見上げてしまった。

 ……いやいや。
 別に逸人さんの子どもを産もうって言うんじゃないですけどね、と心の中で言い訳しながら。

 急に見上げてきたり、目をそらしたりする芽以を、逸人が胡散臭げに見下ろしたとき、芽以のスマホが鳴った。

『オッケーよ。
 もう店に着いてるから、いつでも来て』
とメッセージが入る。

 日向子が圭太を連れ出したようだ。

『あんたが来るのなら、私、圭太を連れ出すから、その隙に来なさいよっ』
と言われたのだ。

「日向子もなかなかせこい手を使うな」
と切ったスマホを見て、逸人が言う。