「……あのー。
 もしや、結婚うんぬんの話ではなく、とりあえず、一緒に働いてくれる店員さんが欲しいとか?」
と言うと、逸人は黙った。

 幾らこの人が有能でも、ひとりで、このサイズの店は回せまい。

 そして、この性格。

 店員を雇うと言っても、なかなか合う人を探すのは難しいだろうと思われた。

 その点、自分なら、気心が知れている。

 少々暴君にふるまっても、はいはい、とこちらがきくこともわかっているだろうし。

 なるほど、そういうことか、と芽以が勝手に解釈していると、逸人は、
「とりあえず、結婚するまでは、住み込み店員として、お前を雇おう」
と言い出した。

「店員になるのなら、お前にも金を払わねばならんな。
 こういう店の店員の月収って幾らくらいなんだろうな」
と壁に貼られた素敵な外国の風景写真のついたカレンダーを見ながら、逸人は言った。

「住み込みだと、百万くらいか?」

 ……店の経営の前に、貴方の金銭感覚は大丈夫ですか?