撲殺はまずいっ、と思った芽以は慌てて、モップから手を離す。

 カン、と音がして、逸人がこちらを振り向いた。

 芽以はあまり顔を見ないようにして、逸人の許にダッシュした。

「もっ、申し訳ございませんっ、逸人さんっ」
とコメツキバッタのように何度も頭を下げる。

 いや、コメツキバッタがほんとうにこのようにするものなのか、見たことはないので知らないのだが……。

「昨夜は逸人さんにあのように甘えてしまいましてっ。

 ぜひっ、逸人さんもなにかお困りの際には、わたくしにお甘えくださいっ」
とちょっと可笑しな日本語でまくしたてたあと、二階へと走り去る。

 掃除はどうした、と言われそうだな、と思いながら。