「そこから先に思考を進めたくないんだろう。

 自分が芽以と結婚できなくなったからって、俺と結婚するように仕向けたけど、俺と芽以が夫婦になったあとのことまで考えたくなかったんだろ?

 自分は結婚もせずに、日向子を妊娠させておいて、なんで、結婚した俺たちの間になにもないと思う?」

 いや、なにもないですよねー、とは思ったのだが、黙っていた。

 そこで、沈黙していた圭太だが、やがて、口を開いた。

「日向子が本当に妊娠しているのか知らないが」

 は?

「日奈子の腹に子供が居るとするなら、その父親は俺じゃない」

 え……。

「俺は日向子には指一本触れてない。

 日奈子が妄想を語り出して危ない感じだったんで、とりあえず、日向子を落ち着かせようと思って、側に居ることにしただけだ」

「いや……とりあえず、今、危ない感じなのはお前なんだが」
と虚《うつろ》な目の圭太に逸人が言う。