この間のように、圭太は瞳をうるませ、側まで来ると、両手で芽以の手を握ってくる。

「芽以っ」

「そこまでだ」

 ……今日も肉切り包丁、大活躍ですね、逸人さん、と後ろから、圭太の首筋に包丁を突きつける逸人を見る。

 逸人さん、死にます、その位置だと……と芽以が思っていると、圭太が逸人に文句を言い出した。

「何故、そこまでお前に制限されなきゃならんっ。
 今、付き合っていないとしても、ずっと友達だったんだ。

 手も握ってはいけないというのはおかしいだろうがっ」

「いや、そういうことを声高に叫ぶお前がおかしいが……」
と言った逸人だったが、包丁を下ろし、

「まあ、いい。
 座れ」
と顎をしゃくって、ホールを示した。

「シャンパンがあるが、呑むか?」

 ああ、酒はもういいか、と頭から肩にかけて酒臭い圭太を見て、逸人は言う。