芽以と神田川の間にその包丁を突き出した。

 どちらにも当たらないようにしながら。

「芽以、その手を離せ。

 三分以上、男と話すな。
 ふしだらな女だな」

 ひっと怯えた芽以と、自分を見、神田川は微笑ましげに笑っていた。

 芽以が中に入ったあと、神田川は裏口の横に置いた青いカゴを手で示しながら言ってきた。

「これ、お試しで使ってみてください。
 逸人さんのお気に召すかはわかりませんが」

「これ、全部ですか?
 代金は払いますよ」
と言うと、いえいえ、これからご贔屓にしていただければ結構です、と神田川は言う。

「本家の方は今、大忙しですよ。
 今度、甘城《あまぎ》の皆さんを招いての会食があるようですが、逸人さんたち、どうされるんですか?

 一応、人数には入っているようですが」

「……あまり行きたくはないが」

 これ以上、実家と距離を置いて、芽以が悪く思われても困るな、とは思っていた。