二人ともパクチー嫌いなのに、何故、パクチーの話で盛り上がる……と思っていると、

「私もパクチー苦手なんですけど。
 逸人さんが作ったお料理、みなさんに、美味しく食べていただきたいですっ」
と芽以が、

「逸人さん、いい奥さん、もらわれましたね」
と神田川が言うのが聞こえてきた。

 そっと覗くと、芽以が神田川の手を握っている。

 無意識のうちに、そこにあった研いだばかりの肉切り包丁をつかんでいた。

 芽以が俺の料理をそんな風に思っていてくれたのは嬉しいし。

 神田川が芽以を褒めてくれたのも嬉しいが。

 芽以、お前がその可愛らしい手で握ったら、男なら、誰でもお前のことを好きになってしまうじゃないか、と思いながら、包丁を手に外に出た。