そんなことを考えている芽以を、逸人は、芽以がパクチーを噛んだときのような顔で見下ろしている。

 嫌いなパクチーに、理解できない妻。

 そんなもので、自分の人生を固めて、貴方は何処へ向かおうとしているのですか。

 ホットミルクで手を温めながら、おのれに厳しいにもほどがあるな、と芽以が思っていると、

「なにか意見はあるか?」
と教師のような口調で逸人は訊いてきた。

 いや、ありすぎて、なにから言ったらいいのかわからないんですが……と思いながら、黙っていたが、視線が痛いので、とりあえず、口を開いてみた。

「あのー、看板見たんですけど。
 お店の名前、なんて言うんですか?」

 沈黙があった。

 この莫迦め、とその目に書いてある。

「phakchi《パクチー》だ」 

 読めなかったんだろう、とやはり、その目に書いてあった。

 ええ、チラとしか見なかったので、パックン、と呼んでしまいました。