逸人の大きな手が芽以の後ろ頭に触れ、すぐそこにある逸人の肩に、芽以の額をぶつけさせる。
逸人の匂いがした。
やめてください、逸人さん、と芽以は思っていた。
慰めてくれるのは、嬉しいけど。
なんだか、気を失いそうだから……。
「私、男の人とこんなに近づいたの、初めてです」
そう言うと、
「……圭太とも手をつないだだけだったんだったか」
と逸人は笑った。
子どもの頃から、圭太と三人、ずっと一緒に居た。
だが、圭太は話しやすかったが、逸人はそうではなかった。
逸人は常に冷静で淡々としてて、遊び友だちというより、尊敬の対象だったので、いつの間にか、すぐ側に居るのに遠い人、になっていた。
……だから、こんな風に抱きしめたりしないでください、と芽以は思う。



