「いや、大丈夫だ。
 俺が外に出しておくから」

 営業時刻も終わりに近づいた頃、逸人は店内に居る芽以に向かって、そう言いながら、一杯になってしまった生ゴミを店の外のポリバケツに入れに出た。

 すると、そこにそれは居た。

 一瞬、霊かと思ってしまうくらい生気のない男―― 圭太だった。

 ブランド物のロングのムートンコートを着たその姿は、お前は何処の芸能人だ、という風情だが、目が死んでいる。

「なにしに来た」
と逸人が言うと、

「なにしに来たって、此処はレストランじゃないのか」
と真っ当なことを言ってくる。

 残念ながら、まだ、オーダーストップではなかった。

「入れ。表からな」
と言って、中に戻った。

 いつも芽以に、看守に指令を受けているようだと言われる口調で。