「可愛いわねえ、芽以は」

 芽以がお茶を淹れてくれるというので、逸人は、砂羽と一緒に窓際の席に来ていた。

 砂羽は厨房を見ながら、
「芽以が圭太を好きだったかはわからないけど。

 ずっと側に居て、なんとなく、そんな風だったのに、いきなり放り出されたから、ショックでないはずはないと思うのよ。

 なのに、泣きもせずに、ああして、あんたに付いて働いてる。

 圭太の遺言だから、あんたに従ってるのかしらね?

 それとも、少しはあんたに気があるのかしら?」
と言ってくる。

 相変わらず、いきなり核心を突いてくる奴だ……と思いながら、暖かい日差しを背に浴びながら、逸人は姉の顔を見る。

「遺言って、圭太、死んでないだろ」

「いや、もう死んでる。
 なんか人として、死んでる」

 仕事はちゃんとやってるんだけどねえ、と砂羽は言うが。

 そんな生気のない社長にみんな付いていくのだろうかと不安になる。