歩いてきてしまったせいで、逸人は父親に盛んに酒を勧められていた。

 それを見ている聖は勧めもしないが、止めもしない。

 逸人は、今は実家は、圭太の結婚で忙しいし、自分も店を開店したばかりで落ち着かないから、挨拶には今度ゆっくり行くという話をしていた。

 その話で初めて、圭太の結婚を知った芽以の実家の面々の顔には、

 ……それで芽以を押し付けられたのか?
とはっきり書いてあったが、逸人は、これも笑顔でスルーした。

 芽以は、白いご飯によく合う、味のしみた厚揚げの煮物を食べながら、

 この人、苦手なものを克服するのが好きだから、私と結婚したいって言ってたけど。

 実は、圭太に弱みでも握られてるか、すごい恩でもあって、仕方なく、私を引き取ったとか?
と思う。

 いや、まあ、普段のあの、兄を兄とも思わぬ態度で、圭太を見下すようにしゃべる様を見ていたら、とてもそうとは思えないのだが……。