パクチーの王様


 そこで、ようやくこちらを振り向いた逸人が言ってくる。

「此処はパクチー専門店だ。パクチーを見せなくてどうする」

 いや、ごもっとも……。

 というか、子どもでもこんなに澄んでないよという瞳で、真っ直ぐに見つめてくるのはやめてください。

 くだらぬことを申しまして、どうもすみません、と土下座して謝りたくなってしまうではないですか、と思う。

 年下のはずのこの男に、芽以は何故か昔から敬語だった。

 っていうか、何故、貴方は、そんなに美しいんですかね? と久しぶりに見た逸人に芽以は思う。

 同じような顔なのに、普通に格好いい圭太とは違い、逸人は荘厳な感じに美しいというか、神々しい。

 ありがたいというより、近寄りがたい感じだ。