パクチーの王様

「あっ、店の者です。
 すみませんっ」
と言うと、逸人も横で頭を下げながら、

「行くぞ」
と言う。

 店舗と隣の家の間はむき出しの土だ。

 草履で歩きにくかったので、ちょっと手を引かれて歩く。

 すぐにドアだったが。

 逸人に手を握られながら、芽以は、細い指だなー、と思っていた。

 作る料理も繊細だもんなー。

 初めて此処に来た日、パクチーの前で思索に耽ふけっていた逸人の長く白い指を思い出していると、先に店内に入った逸人が、

「……お前、本年もよろしくって、そもそも、去年よろしくしてないが」
と突っ込んできた。