パクチーの王様


 急いで店に戻ると、また行列が出来ていた。

 ひー、すみませんっ。
 着物なんぞ来て、浮かれてましたっ。

 隠れて、そっと入ろうかと思ったが、いやいや、せっかくの新年だしな、と思い、芽以はお客様の前で足を止めた。

 ほとんどが今日初めてのお客様のようで、芽以たちが店の人間だとは知らないようだった。

 みな、ああ、振袖着た人が。
 正月だなあ、くらいの視線でしか見ていなかったのだが。

「あのっ」
と言うと、何人かがこちらを見た。

「あけましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願い致しますっ」
と頭を下げる。

 なんだかわからないまま、みんな、下げ返してくれた。

 おそらく、この人、誰? と思いながら。