「うちになんか行かなくていい。
 お前の実家だ」

「えっ?

 うちですか?
 いや、いいですよ。

 この間行ったばかりですし」

 そこで会話は止まってしまった。

 行き当たりばったりに夫婦になってしまった我々の間に、以心伝心という言葉はないようだ、と思う目の前で、芽以は、なんなのかなー、という顔をして、小首を傾げている。

 そのとき、芽以のスマホが鳴った。

「あ、おにーちゃんだ」
と芽以がとる。

「おにーちゃん、昨日はありがと……。

 は?
 着物?」

 普段から大きな聖の声が、こちらまで、もれ聞こえてくる。