パクチーの王様

「つまり、今日失敗したら、それもすぐに広まるということだな」

 あくまでも冷静に、逸人は言う。

 ひい、と思っている間に、また店が混んできた。

 嬉しい悲鳴だ。

 というか、聖は本当に嬉しそうだった。

 久しぶりに、たくさんの女の子たちとお話し出来て。

 ……手伝ってもらっといて、なんですが、お兄様。

 お義姉さんに言いつけますよ、とその様子を眺めながら、芽以は思う。

 聖は、一応、イケメンで愛想が良いので、女子ウケはいい。

 それにしても―― と芽以は運びながらトレイの中を見た。

 ああ、熱々のスキレットの中で煮えたぎる海老のアヒージョに何故、パクチー。

 ピンクの皮に黒いツブツブの入った白い実。

 可愛らしいドラゴンフルーツのサラダに、何故、パクチー。

 季節の野菜のジェノベーゼの上に、何故、季節の野菜でないパクチー。

 ……しかし、なににのせても色鮮やかだから、サマになるな。

 口に入れないのなら、と思いながら、芽以は走らない程度に早足で運ぶ。