パクチーの王様


 芽以は、水を運び、料理を運び、皿をさげ、テーブルを拭いた。

 手ぬかりのないよう、口の中でブツブツ言いながら、その作業を延々と繰り返す。

 水を運び、料理を運び、皿をさげ、テーブルを拭く。

 水を運び、カメムシを運び、もうカメムシの居ない皿をさげ、テーブルを拭く。

 繰り返しの作業に、途中から錯乱してきたようだ。

 いや、どの料理も美味しそうなのだが。

 何故か、どれにもパクチーが入っている。

 しかも、山盛り入っている。

 いや、最初から山盛り設定ではないのだが、客は何故かみな、山盛りにしたがる。

 何度も言うようだが、美しいもちもちの半透明の生春巻きに、何故、パクチー。

 香ばしい炒めたベーコンに粉チーズ、そこに何故、パクチー。

 皮がカリッカリに焼けた、ジューシーなチキンの横に何故、パクチー。

 鶏はこんな風になるために殺されたんじゃないと思う。

 鶏に謝れ、と思いながら、次々と運ぶ。