集中を乱されたせいか、眉をひそめた逸人が、
「なんだ?」
と不機嫌にそれを取っている。

 ……私が電話したときも、あんな顔しているのだろうか。

 急ぎの用でも、もう電話すまい、と怯えながら見ていると、どうやら気に食わないのは相手だったようで、逸人は、ぶっきらぼうに答えていた。

「いや、そっちには行かないよ。
 言ったじゃないか、年末オープンだからって」

 身内の誰かかな? とその口調に思う。

 ん? 身内?
と芽以は固まった。

「忙しいんだろ? そっちだって。
 日向子《ひなこ》が来るから。

 いや、芽以は挨拶に行きたいと言っているが、俺が忙しいからと止めている。

 今更、挨拶に行かなくたって、芽以のことはよく知ってるだろうが。

 いや……別に怒ってない」

 いや、怒ってますよ、と思いながら、芽以は青くなっていた。