まあ、特に宣伝もしてないし、そんなに、てんてこまいするほどお客さん来ないだろうしな、と思い、とりあえず、気を落ち着けることにした。

 失敗しようものなら、この帝王様にどんなお叱りを受けるかわからないからだ。

 仕事中は厳しいが、普段はやさしい……

 とか言うわけでもないしな、と最早、こちらには興味を失ったように、ソースの入った小鍋を見つめている逸人を見る。

 でも、初めて、此処に引っ越して来た日、部屋を暖めてくれていたのは、逸人だったし。

 あのスノードームもどうやら、クリスマスだからと飾ってくれていたらしい。

 スノードームを手に、
「お忘れでしたよ」
と翌日言ったら、

「使ってない部屋になにを忘れるんだ。
 あれはあそこに置いておけ。

 お前が気に入らないのなら、廊下にでも出しておけ」
と素っ気なく言われた。

 昼間、食器などを買い足すときに見つけて、可愛いから買ったのだと言う。