「有ちゃん、明日もよろしくね」
「はーい。宜しくお願いします!」

笑顔がかわいいとそれだけで生きていく上での武器となる。特に女は。

有は自分が同級生の誰よりもかわいいことを知った時からそんなことを心で思い、自分よりもブスな女を見て、顔では優しい笑みを浮かべておきながら、心の中では見下していた。

彼女は高校生の間で人気のファッション誌の読者モデルをしているが、今では仕事の大半はウェブ雑誌に移行し、こうやって撮影をしている様子もリアルタイムでサイトにアップされている。それが次の仕事につながるのだ。

他のモデル仲間はマスクや帽子で顔を隠すけれど、有はそんなことはしない。他人にちやほやされるのが大好きなのだ。

「写真いいですか?」と聞かれれば、「もちろんですよ」と笑顔で答え、写真撮影に応じる。サインを欲しいと言われたらもちろん書く。

優越感に浸るのが何よりも好きなのだ。
腹の中ではその他大勢を見下し大笑いをしている。それを隠しながら『いい人』を演じるのがこの上なく好きなことだった。