再殺動

「トム、なんでここに?」
「てかお前こそなんでいんだよ」
「私はミカに強引に誘われたっていうか」
「てことは、二股かけられてるって、お前のこと?」
「言い方ー! きついなあそれ」
「ごめん。てか俺もお前のこと言えないし」
「ふられて落ちてるって、トムのことだったの?」
「ふられてねーし」

二人は明らかに困惑していた。気まずい雰囲気を切るように、

「まさか、こんな形で会っちゃうなんてね」
瑠璃がわざと明るく言う。
「だよな。これ、偶然すぎて怖いけどさ、はは」
トムの作り笑顔も引きつっていた。

「あいつにバレたらどうする」
「偶然なんだから仕方ねえだろ。それに、カラオケまで追って来るとは思えねえよ。あいつのおかげでけっこう楽しく高校生活送れてるし、なんていうか正直まだこの生活辞めたくはないよな」
「私も同じく」頷く。

「これは仕方ない。それに、ミカちゃんだって俺の友達だって待ってるから戻らないわけにはいかねえだろ」
「どうするの」
「まず、写真はやめとこう。それと、カラオケにいることも載せない。これ、あいつらにも頼んどこうぜ」
「うん。そうだね。深刻になることないか」
「今のとこはな」

「 あのこと、思い出しちゃうね」
「やめろ。それがあるからあいつが俺ら二人で会うの禁止したんだろ」
「一人のときは思い出さないんだけど、でも」
「俺も同じだよ。でもさ、そこはもう昔のことなんだから忘れようぜ。とにかく、思い出しちゃダメなんだよ。あいつのおかげなんだからこうやっていられんのも」
「そうだよね。なんか、ごめん」

ゆっくりと頷いた瑠璃は唾を飲むと辺りに目を配る。トムもまた同じように、『誰か』に見られていないか神経を集中させた。


『ドゥドゥ……』
スマホが再起動した。