「それで、やっとそのときが来たってえわけだな。こっちもどんな話が聞けるのか楽しみだぜ」

 猫夜は三人に可愛らしい頭をちょいと下げ、大きなお目目をゆっくりパチリとつぶった。
 かわいいと昭子が猫夜を抱こうと伸ばした手にはもちろん猫夜のパンチが飛ぶ。

「すいません、あたしは触られるのが大嫌いなもんでして」

 叩かれた手を嬉しそうにさすって困った顔をしながらも愛おしそうな顔をする昭子を猫夜は冷ややかにあしらった。

「あたしと同じように雪みたいに真っ白で綺麗だと思ったら、心までもあたしに似てるよ。まったく可愛らしいったらありゃしない」

 昭子がよくわからないことを口走る。

「どんなことがあったのか、冥土に行く前に俺たちに聞かせておくれな。まずは、その名、苗字だか名前だか知らんが妙な呼び名はなんだい。犬は犬で猫は猫だろう」

 太郎が疑問に思っていたことを手始めに聞いた。
 犬と猫なのに、犬飼に猫夜とはどういったことか。
 猫はたま、犬はポチだろうと太郎が侍に同意を求める。侍もそうだそうだと顎を上下させる。

「それはあたしたちの飼い主だった男がつけた、あたしたちの名前です。犬の名前は犬飼。そしてあたしは猫夜です。夜に拾ったから猫夜ってつけたそうです。犬のほうは知りません」

 けったいなことですわ。と、猫夜が吐き捨てた。

「私はけっこう気に入ってました。苗字みたいで格好良かったですし」

 犬飼も話に加わり始め、猫夜は小さく頷き、犬飼も応えるように頷き返した。

 太郎は侍におかわりのメロンソーダを。昭子には酒を並々と、自分の湯呑みには熱めのこんぶ茶を注ぐと、

「じゃあ、さっそく肴を話してくんな」

 三人は聞く体制を整えた。