太郎がカウンターに座っている瑞香の前に小さくて薄いピンク色のノートを差し出した。
 二度瞬きをし首を傾げる瑞香に、

「このノートはあなたの人生の記録だよ」

 小さく頷き目を伏せた。

「私の人生の記録?」

 太郎に向けていた視線をノートに移し、確かめるように眺めてから軽く撫でてみる。
 柔らかくて冷たかった。

「その感触が、あなたの人生を表してる」

「私の人生は柔らかくて冷たいの?」

「へえ、そうなのかい。瑞香さんの人生ってのは柔らかくて冷たい感触だったんだね。いいねえ、初めての感想だよそれは。ねえ、侍、前にこんなこと言うのはいなかったよね?」

「いなかった」

 太郎は瑞香に渡したノートの意味を言い、瑞香が自分がノートに触った感触をポツリと言うと、待ってましたとばかりに昭子と侍が話に割り込んできた。

 ノートを持ち上げて中を適当に開くと一ページ一ページに絵が描いてある。
 ぱらぱら漫画のように自分が生まれてからの様子が絵で表されていた。
 もちろんそこには殺されるところも描かれている。