「瑞香」

 そうだ、瑞香を生き返らせればそうならないはずだ。
 司は瑞香を生き返そうと、その体を探す。

 しかし、己が八つにバラした瑞香はもうこの世にはいない。体もとうに朽ち果てて残っているのは骨のみだ。
 生き返らせられるわけがないのだ。

 恐怖に支配され、普通では考えられないことを実行しようとする。
 そんな奇行に走った司には目もくれず、三人は瑞香の元へ歩く。

 家がぼうっと音を立てた。
 車のエンジン音が響く。
 山の中にポツンと佇むこの家が赤々と燃えていようとも、誰にも気づかれない。

 妻は馬鹿じゃない。家が燃え終わる頃には雨が降り出すことも計算しての決行だ。
 あれだけ灯油を浴びせたら、残すことなく燃えつきるだろう。

 慌ただしく動いたのはこのためだ。本当だったら死ぬのはまだ先の話だった。
 弱って動けなくなってから生きたまま焼き殺すはずだった。
 しかし死んでしまったらすぐに燃やさないと死体はあっという間に腐る。
 妻はすぐに天気を調べ、やるべきことを考えた。

「この先はおまえさんの仕事だ」

 太郎が少しかがんで瑞香と視線を合わせた。