麻布十番の妖遊戯


「もうこんな時間だったのかい」

「たまちゃんがいないと時間を知らせてくれるのがいなくて困るねえ」

 侍と昭子が、ちっと舌打ちをした。

「それじゃ、飯は後にしましょう」

 太郎が席を立った。

「今年は時間が経つのが早いねえ、そう思うだろう侍」

「まったくですよ。この分だとあっという間に千年経っちまう。とは言っても、今日は誰が来るのか、楽しみだなあ」

「侍、おまえが道で会った奴らの誰かが来るんだよ。この前もそうだけど、お前自身が忘れちゃってるんだから世話ねえよ」

 昭子が侍に突っかかる。

「何言ってんだよ昭子さん、俺らの楽しみのために恨みをもった霊を探し歩いて一日に何十人にも声かけてんのは俺だぞ。そりゃ少しは忘れるってもんだ」

 掛け合いになった二人のやりとりを、また始まったとばかりに眉を下げて見ている太郎は、手だけを動かして準備をしていた。
 言い合いを楽しんでいる二人の間を割るように蝋燭を置く。

「それじゃお二人さん、そろそろ始めるぜ」

 二人は蝋燭の炎に目を移し、にやりと笑う。
 太郎がふうっと蝋燭の火を吹き消した。