「みなまで言うな。俺らの間にそんな他人行儀なんていらんだろうよ。水臭え。それに俺らもかなり楽しませてもらったしな。昭子さんなんか俺がおまえをとっとと送り返そうとしたら、「いいじゃないか、たまには人間の霊を飼うのも悪くないだろう。それにこいつはガキだ。そのときが来るまでここにいたって気づきゃしないさ。それまで置いとこう」って言ったんだぜ。この際だからバラすけど」

 侍が早口で最後に昭子の件をたまこにバラす。
 昭子に殴られるかと目をギュッとつぶってぶたれるのを予測し頭を両手で隠すが、鉄拳がふるわれることはなかった。
 おかしい。目を少しばかり開けてみる。

「殴りゃあしないさ。氷漬けにしておまえもついでに太郎に持って行ってもらうまでさ」

 嘘か本気か知らないが、真顔で侍を見下ろす昭子の顔に笑みはない。真っ白い目がサメを思わせる。
 侍は太郎に助けを求めようとするが、ああ、そうだ、太郎は本来の火車の姿に戻り仕事にかかっている。すかさずたまこに、

「たまちゃん、助けてお願い」と懇願した。

 たまこはそんな侍を見て、笑いを堪えられなくなった。笑っている場合じゃねえやい、と本気で青ざめる侍を見て、