「たまちゃんは心の底では笑ってなかったってことかねえ」

「昭子さん、そりゃ当たり前だろう。まだあんな小さい時に殺されたんだ。なあ太郎」

「ああ、そうだな。あいつの最期が今から楽しみだな。一回泳がせてあるから旨くなってるはずだ」

「太郎ちゃん、今から目の色変えるのやめなさいな。涎垂らしそうな顔になってるし」

「お、すまないね。ついつい」

 垂れていない涎を吹くように口元を拭った。 
 たまこはそんな三人のやりとりを黙って見守る。

 こんな状況をもう幾度となく見てきているたまこである。大体のことはわかる。
 もうこの三人の掛け合いが聞けなくなるのだ。そう思えば思うほど、聞き逃すまいとじっと耳に意識を集中させて一言一言を噛みしめるように体が前のめりになっていく。

 こうやってこの三人の前に姿を現わすということは、やるべきことをやったら消えなければならない時期が来たということだ。
 この家で生活してからというもの、ずっと見てきているのだ。一度たりとも例外はなかった。

「たまちゃん、あんたの人生そんな感じだったわけ?  殺される前はどうだったんだい? まあ、死ぬ直前が壮絶だったからねえ。確かに死ぬには若すぎたけど、楽しかったことはないのかい?」

 昭子がたまこに遠慮なく哀れな目を向けた。それをしっかり受け止め、

「ここでの生活が私の全てでした。昭子さん、ここは大好きなところです。私の家だもん。だから、幸せでしたよ」

 とびきりの笑顔を三人に向ける。そして。