四

 三人の顔には、苦虫をごりごりに噛み潰したような、酸っぱい梅干しを食ったときのような、複雑な表情が張り付いている。
 しばしの間、しんと沈黙が訪れた。

 外を通るバイクの音に沈黙は破られた。通り過ぎたバイクの音を追うように雨音が聞こえてくる。
 知らない間に降り始めた雨に世界はねずみ色に濡れていた。

 シトシトと降る雨のにおいに猫夜が鼻をヒクつかせて嫌な顔をした。
 猫夜は雨が嫌いなのだ。小さい体をぶるりと震わせた。
 犬飼が小さく頷いた。

「死んでからもう一度殺さねえと気がすまねえ」

 湿ってよどんでいる空気をすっぱりと切ったのは太郎の声で、

「その男、どのツラさげて生きてきやがったんだ。俺がこの手で同じことをしてやりてえ。どんなツラでこっちに来るか、楽しみになって来たぜ」

 と、どす黒い殺気を帯びた低い声で独り言ち、若干楽しげな表情を浮かべて犬飼と猫夜を睨みつける。