え? 死因ですか? 虐待ですよ。

 檻に入れられてから死ぬまでの間、あたしたちは殴られたり、蹴られたりして、半殺しの目に何度もあっていました。
 あの男の足音を聞くと怖くて失禁したりもしました。
 それを見てあの男は喜ぶんです。
 それを虐待する理由にこじつけて、精神的に追い込むんです。

 あたしはまだ子猫でした。世の中のことを全く知らないといってもいいくらいです。
 だからどう対処したらいいのか、どうしのいだらいいのか、方法がわかりませんでした。

 もちろん反撃しましたがね、そこは生まれて数ヶ月の子猫です。なんの攻撃にもなりませんでした。

 なんとか引っ掻いてやろう、噛み付いてやろうと飛びかかりましたが軽くかわされて腹に一撃を食らって息ができなくなったりもしました。
 犬飼は、そんなあたしに「やめなさい。気持ちはわかるけどそれじゃあ逆効果だ」と言って殴られるあたしを庇って自分が殴られたりしていました。
 犬飼は最後まであたしを庇い、自分が盾となって守ってくれました。

 あたしが死んだ日、またしてもあの男は私を挑発してきたんです。
 だから、なんとか痛い目にあわせてやりたくて、もう残り少ない体力をなんとか振り絞り噛みつきにいったんです。でも、結局はまったく歯がたたなかった。

 あの男があたしの頭に落とした最後の一撃にあたしはこれで終わると確信しました。無念でしたよ。結局最後までほんのちょっともあの男に傷をつけることができなかったんですから。触ることすらできなかったんです。

 あたしが死んだ後、犬飼は残った力を振り絞り、あの男に喰らいついたんです。右の人差し指と中指と薬指を食いちぎりました。
 あの男は痛さに悲鳴を上げ、発狂し、あたしの亡骸を庇いながら吠え続ける犬飼に向けて鈍器を振り下ろしたんです。

 猫夜と犬飼がなで肩を更に落とした。