猫には好奇心という名の魔物を体の中に閉じ込めている生き物なんです。
 一度それが目覚めるともう止められません。手がつけられなくなるんです。

 あたしはその魔物に乗っとられ、犬飼の忠告を無視し、好奇心いっぱいに庭に降り立ったんです。もちろん辺りをようく注意してでの上でした。

 でも、一瞬で捉えられてしまいました。それはもう慣れた様子であたしの首をひっ掴み、そのまま家の中へ連れこまれました。鳴く暇もありゃしませんでした。どうやって家の中から出てきてあたしを捕まえたのか、今となってもよくわからないんです。そのくらい素早かったんです。

 家の中に連れ込まれたときのあの臭いに、やばいと感じましたがもう遅かったんです。
 後から追って来た犬共々あの部屋へ押し込まれました。

 部屋の中はいろんな動物の血の臭いが充満していました。犬も猫も鳥も兎もいたのだと記憶しています。
 殺されていった動物たちの最期の声が、悲鳴が、恐怖が、怒りが、恨みが、悲しみが、部屋の中に染み付いていました。

 怖かったです。
 部屋中の空気が殺気立っていました。

 殺されていった動物たちの無念の恨みがこびりついてました。
 あたしと犬飼は檻の中に閉じ込められました。

 部屋は真っ暗にされて、窓も黒く塗りつぶされていました。
 空気も悪い。鼻がきかなくなるのは時間の問題でした。

 エサも水もほとんんど与えてもらえませんでした。
 檻から出ようにも頑丈な造りでビクともしない。

 もがいてもがいて必死に逃げ道を探しました。檻を噛んで壊そうとしました。鉄の檻を一心不乱に掘ったりもしました。
 しかし、まったく意味を成さず、ただ体力だけがなくなっていくだけでした。

「それから何日もしないうちにあたしと犬飼は死にました」