ちづは迷うことなく、4列目の一番前の席に向かう。
そこは、幾田さんの席だった場所。
「これで許してもらえるなんて思ってないけど」
そう言って、なにかを机の上に置いた。
それは以前ちづが盗んだといううさぎのクリップだった。
ちづが言ってた用はきっとこれだ。前に話してくれた時、すごく心苦しそうだったから、ずっと気にしていたのだろう。
「返そうと思ってた。でもできなかった。本当にごめんなさい」
この想いが幾田さんに届くかどうかは分からない。
けれど、私たちはもう後戻りはできない。
幾田さんにしたことの罪も、決して消えない。
「……もう、この教室に全員で集まることはないんだよね」
私がぽつりと呟いた声は、ちづと前園さんにも聞こえていた。



