「ちづ、なんで森元と会ってたの?」


ふたりきりになり、私たちは公園のベンチへと移動した。

ふたりがけのベンチだけど私とちづの間には距離があり、それがひどく分厚い壁のように感じる。



「たまたま鉢合わせしたわけじゃないでしょ。だってそれなら並んで歩いてるのはおかしいもん。……もしかして森元となにかある?」


「……なにかって?」


「中学の時森元と……」


「だ、誰から聞いたの!?」


すると、ちづの顔色が変わった。こんなにしどろもどろに瞳を泳がせているちづを見たのは初めてだ。



「……なにも聞いてないよ。だからなにかあるのって質問したの」


焦るちづとは真逆に、私は冷静に聞いた。


ちづといると時間を惜しむほどいつも会話が止まらないのに、今はセミの声がやたらとうるさく感じるほど、沈黙に包まれている。



「……私、高校に入る前に両親の離婚とかで家にいたくない時期があって。その時に知り合ったの。森元と」


ちづがぽつりと呟いた。