麻生さんは動画の中では死んでいるように見えたけど、実際はなにも起きていなかった。
事件に巻き込まれたんじゃないのならそれでいいし、あの動画も作り物ということで大騒ぎすることじゃない。
けれど、ひとつだけみんな言葉にしようとはしないことがある。
気づいているのに、気づいてないふり。
だって認めることはできない。それは絶対にありえないことだから。
「なあ、モヤモヤしてるから言うけど、動画送ってきたのって幾田ってことでいいの?」
それは空気を読むのが下手くそな高野くんだった。高野くんの一言で、みんな顔を見合わせて黙ってしまった。
「い、幾田になりすました誰かのイタズラだろ」
「うん。ラインの乗っ取りとか珍しいことじゃないし!」
静まり返った教室の雰囲気を変えるように、みんなわざとらしく声を張る。
動画を送ってきたアイコンのアカウントはたしかに幾田さんのものだったし、プロフィール画面を確認してもしっかりと幾田透子と表示されていた。
同じクラスメイトだった幾田さんももちろんライングループのメンバーに入っていたし、退会していないということは今現在でも幾田さんのスマホが繋がる環境にある可能性が高い。
けれど、みんなの言うとおり、なりすましや乗っ取り以外、彼女からメッセージが届くことはありえないのだ。
だってだって、幾田さんは……。
「あーもう、なんだっていいじゃん!動画に映ってた私は私じゃなかったんだしさ。この場にいないヤツの話をするだけ無駄っていうか、あんな子なんて初めからうちのクラスにはいなかったってことでよくない?」
麻生さんは自分のやましい気持ちを隠すように、そう言った。



