「今も残ってるんでしょ?消しなさいよ」
「はっ、嫌だね」
そんなふてぶてしい様子に、前園さんは森元がいじってたスマホを勢いよく取り上げた。
「てめえ、なにするんだよ……!」
森元の怒号が前園さんに向けられる。
前園さんはそんなものに怯むことはなく、無理やり森元のスマホに保存してあるであろう動画を消去しようとした……その時。
「やめてっ!!」
か細くも強い声が公園に響く。
声がしたほうに振り向くと、止めたのは何故かちづだった。
ちづは見てのとおり、あまり大勢の前では発言しない。
どちらかといえば私の後ろに身を隠していることが多いちづが、自ら仲裁するなんて……。
「やめてって、それは私に言ってるの?」
前園さんが眉を細める。
「……えっと、なんか論点がズレてる気がして……。だってほら、今は動画を再生してるのは誰かって話だったでしょ?」
ちづは後ろめたいことがあると早口になるのが癖。だからこれがなにかを誤魔化すために言ってることだってすぐに気づいた。
前園さんに隙ができたところに森元がすかさず自分のスマホを奪い取り、「へへ」と奇妙な薄ら笑いを浮かべている。
「前園。お前も少しは小島を見習えよ。こういう物分かりがいい女のほうが男は可愛いって思うんだぜ」
前園さんは森元をギロリと睨み、そのまま怒ったように公園を出ていった。



