「あー腹減った。ご飯食べいこ」
優にぃはそう言い、すたすたと階段方向へ足を進める。
「ちょ、待ってよー! 綾は絶対おいしいよー?」
砂に足を取られつつも、彼をドタバタ追いかけたが、
「何言ってんの」
と、振り払うように手を振り、彼はとりあってくれなかった。
まあ、ままごとだししょうがないか。
と思い、とぼとぼ彼の隣を歩いていたが。
急に後ろから肩を抱かれ、耳に口を近づけられた。
ドキッと全身に熱が走った。
「そんなに食べられたいの?」
「え」
「俺としたいってこと?」
低いささやき声に攻められる。
体がぞくっとして、立っているのがやっとってくらい。
「えっと、そういうことじゃなくて……」
さっきの勢いが消え、しどろもどろになるわたし。
確かに、わたし変なこと言っちゃった。
心臓をドキドキさせながら、どうしよう、と困っていると。
「だったら、そういうこと簡単に言うな。ばか」
こつんと優しいげんこつをくらった。
頭を押さえ、ごめん、と謝った。
その場で立ち尽くしていると、なぜか彼は私を置いて、波打ち際に向かっていった。
そして、海に向かって突然叫び出した。
「あー綾とえっちしてぇー!」
「ちょっ!」
「めちゃくちゃに抱き……ふがっ!」
慌てて彼を追い、後ろから口をふさいだ。
子どもたちもいる中でなんてことを!
波の音が大きくて、まわりには響いていなかったけれど。

