「うわー寒いねー!」



風邪はすっかり治り、今日は遠出して海が見える街に来た。


スニーカーのまま砂浜を駆ける。

遠くではサーファーたちがゆらゆら波に揺れたり、ボードに乗ったりしていた。



「ふわぁ~」



電車で爆睡していた優にぃは、伸びをしながらの大きなあくび中。


この隙に攻撃だ!



「ていっ!」


「おっと!」



体当たりしようとしたが、ひょいとかわされた。くそう。


そのまま優にぃは「綾、遅い遅い!」と言って、広い砂浜を走り出した。



「待ってよ~」



わたしも必死になって彼を追いかける。


ひんやりした空気が頬に当たって気持ちがいい。


しかし、なかなか距離は縮まらない。



「へいへいへい」



彼は待ってくれたかとおもいきや、変な挑発をしてきて。



「追いつい……たぁっ!?」



ダッシュで捕まえようとしたものの、フェイントをかけられ、すっと横に逃げられた。



「ぜぇ、ぜぇ、もう、無理~」



疲れて砂浜にぱたんと座り込む。


笑いながら優にぃは戻ってきて、ペットボトルのお茶をわたしに差し出した。