気づかなければ帰ってもいいよね、私はちゃんとノックしたもの。
誰かに怒られる理由もないし、帰ろう。
そう思って体の向きを変えようとしたその時だった。
ギィ……と低い音が目の前から聞こえてきて、体が凍る。
動けなくなった私の体を他所に、扉はゆっくりと開いていく。
「やあ、いらっしゃい」
そう言って聞こえてきたのは、優しい男の人の声。
ゆっくりと顔を上げその顔を見て、小さく口が開いた。
あまりにも整った顔が現れたものだから、反応できずにそのまま見入っていた。
黒真珠のような綺麗な黒髪に、夕日のような赤い瞳に、陽の光を浴びたことがないような真っ白な透き通った肌。
シャープな鼻立ちに、それとは真逆な柔らかい口元。
黒を基調とした服を着ていても、威圧感は伝わってくることはない。



