軽口を叩くケイは、まだ私の肩を抱いたままだった。

海里の方へ助けを求めようとして、廊下の先に春馬君の姿を見つけた。



楽しそうに笑い合う、小柄な可愛い女の子と春馬君。

あの子が彼女だろうか。


この3階の教室前にいるということは、彼女の方は私と同じ2年で春馬君より年上ということになる。

1年生の教室は4階にあり、わざわざ、春馬君の方から会いに来ているらしい。


「気になるのか? 春馬のこと」


私の肩を抱くケイの腕を引き剥がしながら、海里がどこか不機嫌そうに聞いてくる。


「えっ、別に気になるっていうほどじゃないけど……」


ほんの少し、寂しい気持ちがあるだけだ。


「今日も春馬君は彼女とデートだって。だからユキとは一緒に帰れないみたい」


ケイは無理やり引き剥がされた腕をさすりながら私に教えてくれる。


今日も彼女と会う……。

少しだけ、春馬君が遠い存在になった気がした。