「兄妹にはとても見えなかった。むしろ──」

「あー、恋人同士に見えたとか?」


海里の言いかけた台詞を遮り、作り笑いでごまかす。


「やだな、変な誤解しないでよ。薫兄さんは妹に甘すぎるだけ。いつもあんな感じだよ?」


「でも……。よくあるよな、血の繋がっていない兄妹とか」

「!」


探るような強い眼差しに動揺した私は、つい歩道の端で立ち止まってしまう。


どうして分かったのだろう。

私は呆然と海里を見る。
そこまで言われては、隠す理由もない。


道路の反対側を歩く人影へ目を走らせて頭を回転させていると、海里が別の質問を投げかけてきた。


「まさか、兄貴からも暴力受けてるわけじゃないよな?」

「それはないよ……!」


私は力強く否定し首を振る。


「薫兄さんは、私に優しくしてくれてる。家族の中で唯一の味方なの」

「……」

「海里、もしかして心配してくれるの?」


この傷を見てしまったから、同情くらいはしてくれているのだろうか。


「っ、別に心配なんて」


私から目線を外した海里は、先に歩き出してしまう。

家に着くまで私達は無言だったけれど、気まずい雰囲気ではなかった。