──何、この黒い雰囲気。
もしかして私、この子に騙された……?
不安で冷や汗をかきそうになったとき。
「リュウシン。相原優希奈さん、連れてきたよ」
リュウシン?
私は首を傾げて、春馬君の視線の先を見た。
奥のソファで足を組み、帝王のように座るその人は、ゆっくりと……鋭い眼を私に向けてきた。
前髪を幾筋か残し、あとの髪はオールバック風に上げている、精悍な顔つきの男。
真正面から目が合って、その鋭さに私は思わず視線を逸らす。
でも、向いた先には10人ほどのガラの悪そうな男達が、椅子や机に腰掛けて私を一斉に見ていて……。
正面、左右、全て怖い人達に囲まれている状況。
パニックになりかけた私は、後ずさるけれど。
無情にも後ろのドアは閉ざされ、大柄な男が立ち塞がっていた。
救いを求めるように春馬君へ視線を送っても、彼は可愛らしく笑顔を返してくるだけ。
手の平に汗をかき始めたことに気づいたとき──



