男に強引に腕を引かれたせいで、繋いでいたケイの手がいつの間にか外れていた。

そのまま男達に連れ去られるのかと思われた、そのとき。


覚えのある香水の匂いが風に乗り、一瞬香る。


海里の気配をそばに感じただけで、トク…と胸の鼓動が騒ぎ出した。


冷酷な眼をした彼が拳を振り下ろすと、血飛沫とともに男が一人、また一人とアスファルトへ倒れ込んでいく。


私は顔を引きつらせ、かなり痛そうなその光景から視線をそむけた。


海里が指にはめているシルバーのリングは、ファッションというより喧嘩のときの武器と思われる。


その圧倒的な強さに怯んだ男が、私の腕を解放し脱兎のごとく逃げ出した。


「……いい。放っておけ」


追おうとした海里へ、そう命じたのは如月先輩だった。