背がもう少し低くてスカートを履いていれば、女の人と見間違ってしまいそう。
男子にここまで見惚れるなんて、ほとんど経験がないことだった。
藤色のネクタイを締めているから、私と同じ二年生だ。
クラスが違うとはいえ、今までその存在に気づかなかったのが不思議なくらい。
「こちらこそごめん、大丈夫だった?」
心配そうに覗き込む、優しげな琥珀色の瞳に、ドキッと心臓が高鳴る。
「……あ、大丈夫です」
「うわ、可愛い。人形みたい。確かに龍臣がそばに置いておきたがるのもわかるな」
私のことをじっと見下ろし、その人はキラキラと目を輝かせた。
そう言う貴方の方がずっと綺麗で儚い雰囲気なのに、恐縮してしまう。
「如月先輩を知ってるんですか?」
「有名人だからね」
目元に垂れた前髪をゆっくりと耳にかける、その仕草までもが優雅で洗練されている。
「それにしても。……本当に可愛い」
溜め息混じりにそうつぶやいたあと、突然ぎゅーっと抱きしめてきたので、私の体は氷でできた人形のようにカチコチに固まった。



