正式に……?
私は何も聞いていない。
海里たちはそう聞かされているのか。
「あんまり本気になるなよ」
「え?」
「どうせ、あとで──いや、何でもない」
「な、何? 気になるよ」
言いかけて途中でやめるなんて。
「そのうち分かるから気にするな」
海里は私には構わず背を向ける。
「こいつと居ると……心臓に悪い」
何やらボソリと呟いたあと、フラフラと部屋を出て行ってしまった。
「どうしたんだろ。大丈夫かな海里」
転んだとき頭を打ったとか?
廊下へ出た海里の後を追いかけようと、小走りで部屋を飛び出したとき。
私の肩がまたもや何かにぶつかり、その反動で後ろへ軽くよろめいた。
左右をよく見ていなかったせいで、男子生徒に接触したよう。
「ごめんなさいっ」
反射的に謝り、その相手を見上げた瞬間、私はポカンと口を開けた。
──その人があまりにも綺麗過ぎて。
長めに伸ばした栗色の髪はアシンメトリー。
メイクをしているのかとすら思える、赤い艶やかな唇が印象的。
男子にしては大きめの瞳は長い睫毛で縁取られている。



